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涙腺ドロップ 11

三人は、しばらくは気絶したアッサムを見ながら、自分たちの演奏が第三者を喜ばせたのだと好意的に受け止めて、なんとなく達成感のような気分を味わっていた。

しかし、アッサムが十分を過ぎても覚醒しないので、だんだん不安になってきた。
「だいじょぶかな?」ピックが言うと、リボンも少し心配そうに「まさか死んだりはしてないと思うけど…」とアッサムの顔を覗き込んでから、口の辺りに手をかざした。
「息はしてるみたいだよ」
「じゃあ、生きてるってことだよな」
「たぶん…。ねえモグ、あんたどう思う?」

モグラは、聞かれた内容ではなく、大好きな親分にモグと呼ばれたことが物凄く嬉しかったらしく、ニヤニヤしながら「なにがですう?」と聞いた。

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by Joker-party | 2012-01-31 10:50 | Comments(0)

お詫び

個人的な事情で、しばらく更新が出来ませんでした。
ごめんなさい。

また、少しずつ更新できる状況になりそうです。
よろしくお願いします。

取り急ぎ、お詫びまで。
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by Joker-party | 2012-01-29 17:36 | Comments(0)

涙腺ドロップ 10

アッサムは恍惚状態になっているのだろう、リボンは思った。そうとしか思えないほどアッサムの表情は今まで一度も見たことがないぐらい奇妙に輝いて見えた。

ピックも、その変化に驚いていた。気付かないのはモグラだけだった。なぜなら、モグラは一貫してリボンばかり見ていたからだ。

「うがい薬、ペットボトルの蓋、チョーク、チョーク!まさに俺そのもの、蟻の死骸、チョ~~~~ック!」と曲が終わった。

アッサムは、白目を剥いて、あんぐり開けた口から涎を垂らし、今や仰向けに倒れるような格好で気絶していた。

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by Joker-party | 2012-01-22 06:49 | Comments(0)

涙腺ドロップ 9

演奏が始まった時、アッサムは口を真一文字に結んで、凍ったような表情だった。普段から口数も少なく、どちらかといえば表情に乏しいタイプの男だったが、この時は無理に連れて来られたからかわからないが、とりわけ生気に欠けていた。

乱暴にピアノが叩かれ、タンバリンが不規則になる中で、ピックの歪んだ口から叫びと囁きが小屋の空気をかき乱していった。

「チョーク、チョーク、バッキンガム、割れ花瓶みたいな、虫の糞、あんた誰、割れたガラス、チョーク!」

奇妙な言葉と音が重なるに連れて、アッサムに少しずつ変化が起こった。次第に結ばれた口は開かれ、やがて大きく開け放され、唾液がこぼれだした。表情も、うっすらした笑顔を通過して、嬉しいのか苦しいか判断が付かない不思議な顔になっていった。

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by Joker-party | 2012-01-20 08:14 | Comments(0)

涙腺ドロップ 8

とりあえず出来上がった初めての「オリジナル曲」に、せっかくだから名前を付けようということになり、最初にピックが叫ぶ言葉が「チョーク」だったので、それが曲名に決まった。

「どうせなら誰かに聞いてもらおうよ」とリボンが言う。
「誰かって誰ですう?」モグラは、心配そうに聞く。
「誰だっていいんだよ。なんか感想聞きたいじゃん。ピックはどう?」
「まあ、そんな気もするけど…」
「そうだ、ちょっと待ってて」言い捨てて、リボンは駆け出した。

しばらくして、リボンは近所の八百屋で働いているアッサムを連れて戻ってきた。そして、階段に座らせられたアッサムの前で『チョーク』の演奏が始まった。

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by Joker-party | 2012-01-17 17:11 | Comments(0)

涙腺ドロップ 7

それから二週間ぐらいの間、三人はほぼ毎日学校が終わると小屋に集まって、奇妙な練習を続けた。そして、即興的に生まれた曲の断片のようなものの中から、三人がカッコいいと思えるものを拾い集めようと試みた。

しかし、本当に行き当たりバッタリの即興だったから、「あ、さっきのカッコよかったね」などと言った瞬間には忘れている始末で、似たような断片を再現しようにも、かなり手こずったのだが、いくらド素人でも、回を重ねるうちに少しは進歩するものらしく、二週間経った頃には、断片が集まってなんとなく形になってきた。

そうは言っても、相変わらずキンキンポロン、シャッシャカに「下駄かたっぽ」とかがベースなので、第三者が聞いても曲だと思わないだろうようなものだったが、三人は異常に高いテンションで「やった、やった!」と叫んで喜び合った。
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by Joker-party | 2012-01-15 16:52 | Comments(0)

涙腺ドロップ 6

ピックが「なんかいいじゃん」と言ったので、いい気になったリボンは鍵盤が少なくてキンキンしたピアノをデタラメに叩き、それにリズム感ないのもいい加減にしろと言いたくなりそうなモグラのタンバリンが加わって、なんとも言えん異国情緒というには程遠いが、少なくともポップとかロックとか名付けたくはない感じの音が鳴った。

そこに歌を乗せようとしても、歌詞なんて即興で出てくるもんじゃないし、そもそも文章を書くとか考えるとか苦手で経験もないピックには、その気もなかったが、成り行きとはいえバンドのリーダーっぽくなってしまっていたので、なんか声を出さんとならんと思っていると、物置小屋には変な物がたくさんあったから、とりあえず目に付く物の名前などを叫んでみた。

キンキキキンキン、シャラシャパッパパとかに混じって「チリトリ」「変な帽子」「割れた花瓶みたいなやつ」「天狗のお面」などの叫び声が入った「オリジナル曲」は、少なくとも三人にはバンド的練習を翌日もやろうという気にさせる効果があった。

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by Joker-party | 2012-01-13 10:04 | Comments(0)

涙腺ドロップ 5

リボンの家には、やや大きな庭があって、その片隅に古い物置小屋が建っていた。そこで、ピックたちは集まって「オリジナル」作りを始めた。

そうはいっても、既に本物のピアノは売り払われていて、物置で埃をかぶっていた幼児向けのおもちゃのようなピアノとモグラのタンバリンだけが楽器であり、それ以外に音が出るものは、三人の手足や声だけだった。

その上、彼らには今のところ文化祭に出るとかいう発表の機会が予定されていたわけでもなかったから、まさにただの遊びに過ぎなかったわけで、どんな曲を作りたいのかさえ本人たちにもわからなかった。

それでも、手探りで曲作りのような遊びを始めたのは、最初にデタラメに出した音の塊が、なんかしらんが面白かったからだ。

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by Joker-party | 2012-01-11 05:01 | Comments(0)

涙腺ドロップ 4

ピックが初めてバンドを組んだのは中三の頃だった。正確に言えば、「バンドでもやってみない?」という友達に誘われて、しぶしぶ結成の準備に協力したのだが、メンバーも決まらぬうちに、その友達が転校してしまい、成り行きで組むことになったのだ。

しかし、バンドといっても集まった三人はピックも含めて誰一人楽器を持っていなかったし、ほとんど触ったこともなかった。近所に住んでいたリボンが、幼稚園の頃少しだけピアノを習っていたというので、その担当になり、その彼女を自分の親分だと勝手に思って舎弟のように付け廻っていたモグラが、たまたま持っていたタンバリンを持って参加志願をして許可され、ピックはとりあえずヴォーカル担当になったのだった。

成り行きでバンドを組むハメになったピックはもちろん、他のふたりも曲を作ったことも詩を書いたこともなかったが、なけなしの情報によると既存の曲をコピーするためには、それなりのテクニックが必要らしく、どうせかないっこないからオリジナルにしようとういう乱暴な理由で曲を作ることになった。

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by Joker-party | 2012-01-09 05:56 | Comments(0)

涙腺ドロップ 3

ピックは、ちょっと拍子抜けしたが、悪い気はしなかったから「来てたんだ、この日…」と言いながらカメラを差し出した。サリーは、相変わらずニヤニヤしながら「いいセン行ってるんだけどな~」と言って受け取った。

「なにが?」
「バンド」
「それって、つまりイマイチってことだよね」
「けっこう見てんだよ、ライヴ」
「あそう…。ありがと」
「知りたい?」
「え?なに?」
「バンド改造計画」今度はにっこり笑ってそう言うと、サリーは立ち上がり「知りたかったら、なんかおごって」と手を出した。

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by Joker-party | 2012-01-07 17:07 | Comments(0)

校倉元の冗談なブログ


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