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涙腺ドロップ 21

紙を受け取ったリボンは、かなり長い間それを黙って何度も読み返してから、無言でピックに廻した。ピックも、何度か読んでモグラに渡した。

モグラは、一回目を通してこう言った。
「なんかよく意味がわからないんですけど、なんか熱いです」
「うん、そう、熱い」リボンが言う。
「ああ、俺もそう思う」ピックも言った。
「それって、使えるってこと?」アッサムが聞く。
「使うっきゃないっしょ」リボンが言って、ピックもモグラもうなづいた。

こうして、再出発したばかりの涙腺ドロップスにとって初めてとなる「歌詞先」の曲作りが始まった。

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by Joker-party | 2012-03-27 08:53 | Comments(0)

涙腺ドロップ 20

その紙には、アッサムの風貌からは想像できない几帳面で小さな字で、こんな文字の羅列が書かれていた。

 きりきり舞いの 昼下がり
 俺は叫びながら 銃をブッ放しておった
 水着の女が倒れていたが 血は流れていないのだ
 銃は牛蒡 弾薬はトマト
 つぶれて流れる赤い果肉 大安売りの声
 俺は頂きたかった 水着の女の水着
 それで泳いだら ラスベガスに着くのだ
 
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by Joker-party | 2012-03-17 17:36 | Comments(0)

涙腺ドロップ 19

4ピースとなって再出発したバンドの練習は、週二回ぐらいのペースで定期的にリボンの物置部屋で行われた。

それまでは、ほぼ毎日なんとなくやっていたのだが、アッサムがダラダラ毎日やるより、気合いを入れて集中してやったほうがいいと提案したのだ。そして、それぞれが次の練習までに何かアイディアを考えてくることになった。

相変わらず演奏自体は即興に近かったが、発する音は以前に比べてインパクトが出てきたし、なんとなくハーモニー的複合もあった。

そんなある日、アッサムが「ちょっと歌詞を書いてみたから、見てほしいんだわ…」と持ってきた広告の裏紙を差し出した。

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by Joker-party | 2012-03-11 15:30 | Comments(0)

涙腺ドロップ 18

アッサムが加入したことによって、バンドは大きな変化を遂げた。といっても演奏ではなく、精神的なものだった。

彼が持参したリコーダーは、ご丁寧にフェルトで作った袋に入っており、それは亡くなった母親が縫ってくれたもので、そのため傷一つない保存状態だったが、吹いた音はピイピイと甲高く調子っぱずれで、お世辞にも上手いとは言えなかった。
しかし、あの日蘇生した後で言い放ったような客観的批評精神は鋭く、自分の演奏を棚に上げてもメンバーに対してはビシビシと物を言うので、成り行きで始めて自己満足していたような状態の三人は、初めて誰かに聞かせることを意識し始めたのだった。

そして、もう一つ大きなことがあった。アッサムに指摘されるまで気付かなかったのだが、なぜかバンド名がなかったのだ。

「そりゃダメだわ。なにするにしても、団体っちゅうもんは、なんか名前がないといかん。不便ちゅうだけじゃなくて、付ければ愛着がわくからなあ。飼い猫と同じだわ」
アッサムに言われて、四人はそれぞれ思い付いた単語を紙切れに書き出した。そして、その中からピンと来るものを絞っていき、上位になったものを組み合わせたりして、なんやかんや入れ替えたりしたが、どれも甲乙付けがたく、全員一致のもなかったので、最終判断はピックに任された。

―――こうして決まったバンド名は、涙腺ドロップス。

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by Joker-party | 2012-03-05 07:36 | Comments(0)

涙腺ドロップ 17

突然の申し出に、しばらく三人は声が出なかった。それぞれに思いは違うが、ついさっき失神状態だった最初の観客からの思いもよらぬ要望にアッケに取られていたのだ。

短い沈黙を破ったのは、モグラだった。
「リボンさんがいいなら、ボクはいいですよう」
「あたしは、別にいいと思うけど…。ピックは?」
ピックも、特に反対する理由がなかったから「ま、いんじゃね?」と曖昧に答え、アッサムの加入が決まった。

「それでさ、なんか楽器できたりするの?」リボンが聞いた。
「笛なら少し」
「笛?」
「うん。小学校の頃だけど」
「それって、なんだっけ…ああ、リコーダー?」
「知らないけど、まだ持ってると思う」
「じゃあ、今度持って来て」

こうして、成り行きで生まれたバンドは、出来たばかりで新たなスタートを切ることになったのだ。

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by Joker-party | 2012-03-02 08:10 | Comments(0)

校倉元の冗談なブログ


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