フラッペ

フラッペは、冷たくてすぐ溶ける女だ。
風に乗って男を誘い、遠くて高い場所に連れ去る。
男が熱を上げ夢中になると、雪のように冷たい。
そして気が付くと、溶けてしまっている。

フラッペの成分は、ほとんどが水だ。
それ以外は、合成着色料と香料だ。

男は、その色よりむしろ香りに誘われるのだ。
フラッペの香りは、甘酸っぱく艶っぽい。

フラッペを食べた後、たいていの男はこう言う。
ああ、なんて冷たくて美味しいんだろう。

それなら谷間の湧き水を飲みなさい、森の精がそう言う。
しかし、男は聞く耳を持たず自滅する。

今日も男たちは溶けてしまったフラッペを求めて彷徨っている。