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鰐の口に挟まった姉

一刻も早く病身の母に会いたくて、秒針に乗って移動したが、大雨の影響で思いの外遅くなってしまい、水族館に到着したのはもう日暮れであった。

夕陽を浴びて待っていたのは、母のみならず長年共に暮らし言わば家族も同然の鰐であり、我竜園に嫁いだ姉はその口に挟まっていた。

歯槽膿漏で臭い息を吐く鰐の口から顔を出し、姉は渾身の力を籠めてこう言うのだった。
たとえ苦しくても、梨は薄く剥いて月を見ろ。

空を見上げると、月は眠る寸前であった。

by Joker-party | 2011-07-20 02:57

冗談会議の怠慢なブログ


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