涙腺ドロップ 1

誰かに呼ばれたような気がしてピックが振り返ると、サリーがカメラを構えていた。

男子便所の中まで入ってきて写真を撮ろうとするなんて、なんてクレージーな女だろうと思うのが普通かもしれないが、暑さにまかせて大量に流し込んだビールのせいで、滝のごとく流れ続ける小便は止められないし、そのシャワーみたいな音の緩急に合わせて、タイミングよくリズミカルにシャッターを切るもんだから、やめてくれと言う前にうっかり笑ってしまった。

それをオッケイのサインと思ったのか、サリーはシャッターを切り続け、まるで計ったように放尿終了時刻の数秒前に出て行った。