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駅弁と茶畑

私は、ホームのベンチに腰掛けて駅弁を食べていた。
廃線の囁かれるローカル線で、本数が極端に少なく、次の下りまで小一時間はあるのだった。
風のない穏やかな天気で、他に客は誰もおらず、線路の向こうには茶畑が広がっていた。

駅弁は、これといった特徴のない平凡な幕の内だったが、こんな風景の中で食べると、見た目以上に美味しく感じるのだった。
茶畑は、鮮やかな緑に輝いており、まるで海のようだった。

駅弁を半分ほど食べ終えたとき、私はお茶を買い忘れたことに気が付いた。
別にお茶がなくても弁当は食えるし、普段でも水分なしで食事をすることはあるので問題はないのだが、眼の前に広がる茶畑を見ていると、無性にお茶が欲しくなってきた。

私は、駅弁を食べる手を休めて、じいっと考えていた。
そして突然、自分でも不思議なのだが、まさに突然、線路に飛び降りると、茶畑へと走りだしており、気が付くと二三枚の茶葉をむしっていた。

ホームに残された駅弁を見ながら、私は茶葉を口に含んで噛んだ。
それは苦いだけだったが、玉露の味がした。
振り返ると、段々に重なる茶畑の海の向こうに、大陸が見えた気がした。
by Joker-party | 2008-04-07 06:07

冗談会議の怠慢なブログ


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