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2008年 02月 13日 ( 1 )

メランコリック・タッチ

師匠は、もう一度さっと俺の尻を撫でると「どうだ?」と聞いた。
その微妙なタッチに、なんとも言えずにいると、師匠は笑って言った。
「なんか淋しいってゆうかさ、けだるいってゆうかさ、そんな気分になるだろ?」
たしかに、なる。
「…はい」と答えると、師匠は俺の肩をポンと叩き「ま、頑張れ」と言い残して奥の間に去った。

実に不思議なことだが、師匠の触り方だと、なんともいえない気分になるのだ。
少なくとも怒って睨んだり声を荒げたりする気にはならない。
むしろ気が抜けてぽわ~んとなるのである。
このタッチなら、おそらく絶対に捕まらないと思う。
しかし、何度教わっても師匠のような微妙なタッチは出来ない。

客間に残された俺は、ふうっと大きく息を吐いて、修行を再開することにした。
左手に稽古用吊革を持ち、年季の入った古いマネキンに今風のギャルファッションを着せた稽古台の後ろに立って構える。
この「自然流構え」が、けっこう難しいのだ。
そして軽く息を吐きながら、さっきの教えどおりに右手でタッチした。

車内研修に出るためには、道場での稽古で師匠に合格を貰わねばならない。
日が傾き始めた午後の客間で、俺は何度もタッチを繰り返した。
遠くでウグイスが鳴いた。
まもなく春が来る。
by Joker-party | 2008-02-13 04:42

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