2012年 04月 29日 ( 1 )

涙腺ドロップ 24

独り身で特に道楽もない喜八郎は、スナックにいない時間でも話す相手などなかったから、狭い町内に住む顔見知りの人たちも、彼の声を思い出せないぐらいだったが、もちろん言葉を忘れてしまったわけではない。

喜八郎は、ときどき雀や鳩や道端の草花には自分から声を掛けることがあった。
それはたいてい「元気そうだな」とか「いい天気だな」などの短い言葉だったが、そうやって自分から話し掛ける時の喜八郎は、珍しく表情もにこやかで嬉しそうだった。

犬の太郎が迷い込んできた時、喜八郎は洗濯物を干していたのだが、太郎の鳴き声に手を止めて「まあ待ってろ」と言ったのだ。

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by Joker-party | 2012-04-29 08:07 | Comments(0)

校倉元の冗談なブログ


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